忍者ブログ
ゲームの感想や自作ゲームについて

バレンタインですね!!チョコくだs


非リアにとってはなんと寂しいイベントでしょうか。
でも悲しむことなかれ。
自分用のチョコは既に装備済みだ!!

バレンタインはきっと、普段非リアな人間がチョコを自棄食いする為のイベントだって信じてる。








まぁ、そんな流れでたまにはイベントごとに参加してみようかと思いつつ落書きをば。
ってな感じで自作ノベルゲー『狂気の定義』のお二人で軽いやり取りが頭に浮かんだのでそれを出してみた次第です。


「水無瀬君。はい、これあげる」
 2月14日、バレンタインデー。
 日本では女の子が好きな人に本命チョコを渡す日であり、そうでなくとも普段お世話になってる人に義理チョコを送る慣習のあるイベントでもある。
 そんな日となったわけで、私は最近交流を持つようになった水無瀬君の分も用意した。
 もちろん後者の意味合いで、ということは念押ししておく。
「……ああ、そっか。そういえばバレンタインだっけ。ありがとう」
 通学路の途中で水無瀬君にチョコを差し出せば、今気付いたといった態度で私に向き合う。
 私からチョコの入った箱を受け取ると、驚いたように目を瞬かせた。
「これ、結構重いね。柿崎なら他にもあげる人たくさんいるだろうに、僕ひとりがこんな量貰って良いの? 普通、義理ならもっと少なくするものじゃないの?」
「水無瀬君曰く、私は普通じゃないからね」
 いつか言われたことを蒸し返すと、水無瀬君は苦笑を浮かべた。
「それ、まだ気にしてたの?」
「普通じゃないことをした水無瀬君には一番言われたくないと思ったから」
「別に誰に言われても変わらないと思うけどな。柿崎も他の人と比べてどこか変わってるのは事実だし」
(……そんなに変かなぁ? 水無瀬君と比べれば、かなり常識的な人間だと思うんだけど)
 そもそも常識から外れた水無瀬君と比べられるのは納得し難いものがある。
(でも、そんな水無瀬君から見ても変わっているってことは、他の人からもそう見られてる可能性が大きいってことだよね)
 だが、それにしては他の誰からもそういった指摘は今までされたことがない。
(やっぱり水無瀬君だけが勝手にそう思ってる、とか?)
 元々、他の人と比べて感性のおかしい人間だ。
 おかしい人間におかしいと思われるということは、マイナス×マイナスがプラスになるように、他の人間からすると正常ということになるのかもしれない。
 そう考えれば、こうして水無瀬君に変だと言われることは逆に喜ばしいことに思える。
(だったら現状のままで良いんだろうな)
 どちらにせよ、水無瀬君以上の変人でないことだけは確かだ。
 水無瀬君と話すようになってから恒例になった自問自答に、私は結局いつもと同じ結論を付け自分を納得させた。
「それで、何であげたチョコが重いかって話だけど……」
 脱線しかけた話を戻す。
 いまだ不思議そうな視線を箱に向けていた水無瀬君は、声をかけたことで顔を向けてくれた。
 それを見て、私はにっこりと笑みを作ってみせた。
「水無瀬君のは特別に用意したから、だよ」
「……」
 パチクリと、もうひと瞬き。
 一瞬呆けたように口を開くと、次に水無瀬君が浮かべたのはなんとも言えないような、呆れたような表情だった。
「それは……『誤解させるようなことを言わないでよ』って頬を赤らめるべきなの? 驚くところなの? それとも素直に喜んだら良いの? どの反応が正解なの?」
「元々水無瀬君には普通そうなリアクションは期待してないし、それで正解なんじゃないかな。水無瀬君がどう反応するか見てみたくて言っただけだし」
「……それはどうも」
 なんとも盛り上がりにかけるが、普段あまり動じない水無瀬君が一瞬でも戸惑った様子を見れたのだから自分としては満足だ。
 残るは、箱の中身を見た時、どうリアクションをとるかだが。
 これもあまり期待はしていないが、自分が『一生懸命作った』ものである。
 それで少しでも動揺を誘えないかが興味深く、私は水無瀬君を急かした。
「とりあえず、箱の中空けてみてよ。水無瀬君が喜びそうなものを作ったんだから」
「作った? ってこれ手作りだったんだ。それにしても、そんな風に急かされると何か企んでないかとちょっと不安になるんだけど……」
 怪訝そうにしながらも、水無瀬君も中身が気になるのか若干手早く包装を解いていく。
 そして、箱を開けた。
「……」
「……」
「……なるほど、確かにこれは特別だね。ハート(心臓)型のチョコなんて、そうそう作れやしない。しかもかなりリアルだし」
「気に入って貰えた?」
「柿崎にしてはなんとも生意気な厭味をかましてきたなって思ったけど……良いんじゃないの? まぁ、こんなことに頭を回すくらいならもっと勉強とか頑張った方が効率的だと思うけど」
「……う」
 普段変人といわれている仕返しに仕掛けたものだったが、勉強のことに関して言われてしまえば何も言い返せなくなってしまう。
 こと、勉強に関しては天才と称される彼からの言葉だとすれば尚更に。
 悔しさに歯噛みすれば、フッと笑み混じりの吐息が漏れるのが聴こえた気がした。
「やっぱり、柿崎は変わってるよ」
 
 ――どこか歪に歪んだ二人の、常識から逸れたバレンタインの一幕である。

拍手[0回]

PR